この前、ふとこんな質問を受けました。
「子育てが終わった後って、夫婦ってどんな関係になるんですか?」
確かに気になりますよね。
子育て真っ最中の頃は、まるで毎日が文化祭の前日のように、ドタバタと熱気に包まれた日々でした。
夫婦で意見がぶつかって喧嘩もしながら、それでも必死になってなんとか子供を育てていく。
大変なことも多かったですが、今振り返ると「子育てってやっぱり面白いな」と思える、濃密な時間でした。
そんな日々が過ぎ去り、子供が巣立った後、夫婦二人きりの生活がやってきます。
現在、私も妻と二人きりで過ごしているわけですが、今の私たちの関係を少しお話ししましょう。
結論から言うと、今の私たち夫婦は、第三者から見たら「え、熟年離婚の準備中ですか?」
と心配されるレベルで冷めているように見えると思います(笑)。

とにかく会話が少ない。
一緒に何かをするということも激減しました。
世間の声を集めてみると、
「子育てが終わったら夫婦で旅行三昧!」
「休日は一緒におしゃれなカフェでランチ!」
なんていう理想図もよく耳にしますが、我が家の現実は全く違います。
ただ、我が家には最強の「緩衝材」がいます。
愛猫の小麦です。
夫婦の会話は少ないのに、私なんかは小麦に対しては
「おっ、小麦さん、今日のカリカリはちょっと味が違いますか?」
「そうかそうか、昼寝しすぎて腰が痛いと。パパも同じだよ」
なんて、全く気を使わずに妙に饒舌に語りかけています。
妻とも、無理に話題を探さなくても
「小麦、ちょっと細すぎない?」
「もっといっぱい食べてもらわないとね」
と、猫を介せば自然と場が和むんですよね。
猫が1匹いるだけで、どれだけ救われているか。
猫の存在感、恐るべしです。

昔の私なら、こういう夫婦の会話のない関係を「なんだかつまらないな」と思っていたかもしれません。
でもね、実は今、この状況がものすごく嬉しいし、ありがたいんです。
心理学の世界に「ゲシュタルトの祈り」という有名な詩があります。
ドイツの心理学者、フレデリック・パールズが提唱したもので、こんな一節から始まります。
「私は私のことをする。
あなたはあなたのことをする。
(中略)あなたはあなた、私は私。」
この言葉の通り、お互いの境界線をしっかりと引いて、互いに干渉しない。
「自分は自分のやりたいことをやる」
「相手は相手のやりたいことをやる」
この「自立した個」としての距離感が、本当に心地よいのです。
たまに気が合えば「ご飯でも食べに行く?」くらいの、ゆるーいスタンスです。
ここでふと、
「そこまでお互いバラバラで干渉しないなら、一緒にいてもいなくても同じレベルなんじゃないの?」
と思われるかもしれません。
一緒にいなくても同じレベルかというと、全く違うんです。
もし本当に離れ離れになったら……想像するだけで「どうするんだべね」と途方に暮れてしまいますし、とてつもない寂しさが押し寄せてくるはずです。
一緒にずっとやってきた「戦友」のような情がある。
目には見えないけれど、確実に二人で築き上げてきた強固な土台がある。
空気みたいに存在感がないけれど、なくなったら息ができない。
それが、子育てを終えた夫婦のリアルな絆なんだと思います。
子育てが終わって、夫婦の会話が減ったと悩んでいる方がいたら、こう伝えたいです。
それは「冷めた」のではなく、「お互いが無理をしなくていい最高の距離感」を見つけただけかもしれません。
干渉しないという優しさ、沈黙が苦にならない関係性。
これこそが、夫婦のひとつの前向きな到達点ではないでしょうか。
心理カウンセラー 木村裕

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