いつもブログを読んでいただき、ありがとうございます。
実は以前から「小説を書いています」と言い張っていたのですが……白状します。制作はかなり、いや、めちゃくちゃ難航しています(笑)。
ブログと同じ感覚で書き進めてみたら、これが大間違い。小説の世界は思った以上に奥深く( 当たり前ですが )、「このままだと、自分だけが楽しい超・自己満足な小説になってしまう!」と途中でハッと気づかされたんです。
そこで、悩んだ末に、3ヶ月間かけて書いた原稿を「えいっ!」と一気にすべてゴミ箱にポイして、ゼロから全力で書き直していました。
この間、ひたすら色々な本を読み込み、YouTubeを見たり、小説に精通している方からアドバイスをいただいたりしながら、一から必死に小説の書き方を学んできました。
初心者ゆえに右往左往していますが、とにかく書くのが楽しすぎて、完全に小説の沼にハマっています。
全体の完成まではあと一歩ですが、物語の雰囲気や流れがようやく納得のいく形になってきたので、まずは「プロローグ」と「第一章」を先行公開します!
のんびりしている暇はありません。
できるだけ早くこれを完成させて、まずは人生一冊目のデジタル本として皆さんにお届けするつもりです。
なんなら、もう次の作品のアイデアまで湧いてきていて、早く次を書きたい衝動と戦っているほどです(笑)。
ここから私が紡いでいく小説の世界を、少しずつ見守っていただければ幸いです。

著:木村 裕
プロローグ ――名もなきオーケストラの調べ
マーブル模様のあめ玉を転がして、僕は世界と遊ぶ。
ゆりかごに揺られながら。
激しく響き合いながらも、しずか。
凍えるほどに、あたたかい。
ちぎれそうに切なくて、やさしい。
僕は、名もなきオーケストラ。
丸めた尻尾の先が、リズムに合わせてかすかにゆれる。
その身を委ねて。
もっと、ずっと、ここにいたかったけれど。
でも、もう、眠くて、眠くて……
もう……いいかな。
第一章 ――響き合う足音
足元の霜がカサリと鳴いた。
目の前には、街の明かりを拒むように昏い水面が広がっている。
底冷えする夜気の中、黒く澱んだ川の流れが、すべてを飲み込もうと静かにうねっていた。
「……終わり。もう何も考えなくていいんだ」
傍らの石の上、使い古されたランドセルが寂しげにその身を預けている。
ただ、ほんの少し重心を前へ委ねるだけで、世界の境界線へと溶けていける。
瞳は、川面をただじっと捉えて離さない。
そんな「終わり」の淵で、凍てついた意識がふっと揺れた。
優しい二人の顔が浮かぶ。
「凪沙は将来どんな仕事をするのかな」
「どんな人と結婚するんだろうね」
なんて、楽しそうに笑い合っている。
食卓に広がる、パパが焼いてくれた甘い卵焼き。
家族旅行で行った海。
足の指の間をすり抜けていく砂の感触。
寄せては返すさざ波に、心がそっと重なる。
凪沙の胸に、ポトンと一滴の色が落ちる。
滲んだかと思うと、またすぐに冷たい暗闇へと溶けて消えていった。
(パパ、ママ。二人のところに生まれてきてよかったよ……ありがとね)
体内の熱をすべて手放すように、口からゆっくりと息を吐き出す。
ふわりと舞う雪が、まつ毛に触れて溶ける。
静かに目を閉じた。
闇への誘いに、身体が静かに前へと傾いていく。
――あと数秒。 冷たい水の衝撃が、私のすべてを奪い去ってくれる。
そう覚悟を決めて身を委ねた、まさにその刹那だった。
ふっと足の裏の感覚が遠のき、時間が凍りついたかのような奇妙な静寂が全身を包んだ。
傾きかけた身体が、その場でぴたりと止まる。
意識だけがひっそりと宙に浮いている。
恐る恐る目を開けた視界には、変わらず冷たい河原の景色が映り込む。
重く澱んだ川の流れが、低く唸りを上げて夜の静寂を切り裂いていた。
すべてを優しく飲み込んでくれるように思えたその川鳴りが、急に、冷徹で容赦のない現実の音として耳の奥へと響き渡る。
激しい川の咆哮と、頬を打つ冷たい風。
この世界にただ一人取り残されたような呆然とした心地のまま、ただ白く濁る自分の息をじっと見つめていた。
なぜ、生きているのか。
――そう思った、まさにその時だった。
体の奥深くから、何か熱いものがじわじわとこみ上げてきた。
(……?)
トクン、トクン、トクン。
ただ鼓動だけが、静まり返った世界の中でそっと時を刻み始める。
その確かなリズムは凍てついた空気を伝い、死に向かっていた意識をゆっくりと、今ここに繋ぎ止めていく。
瞬間、右手にビリリと鋭いしびれが走った。
「っ……!」
その感覚を確かめるように、かじかんだ左の指先で、そっと右手に触れた。
不思議と温かい感覚。
その温もりに突き動かされるようにして、瞳は自然と右へと動いた。
すると、空白の視界に、草むらにポツンと置かれた、雪に縁取られた小さな段ボールだけが、まるでそこだけ光が宿ったかのように浮かび上がっている。
肺の空気が押し出され、言葉にならない疼きが胸の真んなかを貫いた。
抗いようのない「呼び声」。
「……誰?」
気づけば、歩を進めていた。
箱の前に立ち、一度、息を呑む。
震える手で積もった雪を払い、静かに箱の蓋に指をかけた。
恐る恐る中を覗き込むと、そこにあったのは、一面の雪の白さを切り取るような、小さな黒い影――。
まだ片手に乗るほどの、真っ黒な子猫がそこにいた。
寒さに耐えるように、身体をきつく丸めて、かすかに震えている。
息をすることさえ忘れていた。
この絶望の淵になぜこれほど小さな命があるのか。
理解が追いつかないまま、そのか細いぬくもりをただ見つめていた。
その子を抱き上げたとき、驚くほど自然に、両腕の間に収まった。
それは、最初からこうして丸まって腕に抱かれることが、自分の居場所だと知っていたかのようだった。
そして、
「ミャア……」
凍てついた頬を、温かな一筋が伝う。
胸元で刻まれる確かな鼓動が、理屈を超えた答えを教えてくれた。
(……この子と、生きる。)
私と、この小さな命――。
雪の河原で出会った二つの孤独が、重なり合うぬくもりとなって、今、新しい物語の扉をそっと叩いた。

コメント