皆さん、こんにちは。 心理カウンセラーの木村裕です。
今日は春の恒例行事、タイヤ交換をしました。 重いタイヤをよいしょと持ち上げ、冬の終わりを告げる儀式です。
ところが、ふと腰を上げた瞬間、愛車(ダイハツ・エッセ)の姿に目が止まりました。
「……君、ボロボロだね」
思わず、独り言が漏れてしまいました。 気づけば走行距離は、地球を3周半以上も回った計算になる 14万キロ目前。
ボディには無数の小傷があり、 それはまるで、「長年使い込んで手に馴染んだ、おじいちゃんの愛用の湯呑み」のような、 なんとも言えない温かみと、役目を果たしてきた誇りを感じる佇まいでした。
🍀 「一番安いの、ください」
このエッセ君と出会ったのは、今から7年前のこと。 当時の私は、正直に言いましょう。お金がありませんでした。
車屋さんに駆け込み、恥を忍んでこう言ったんです。 「とにかく、今ここで一番安く買える車をください」
そうして、30万円という破格で私の元へやってきたのが彼でした。 私が選んだというより、彼が「僕で良ければ、お供しますよ」と、 どこからか流れてきてくれたような、そんな不思議な縁でした。
💧 悲しき「ボロボロ」の正体
タイヤを交換しながら、フェンダーの傷を指でなぞってみました。 「もっと丁寧に扱ってあげたかったな」 ふと、胸の奥がチクッと痛みました。
洗車を後回しにした日、狭い道で擦ってしまったあの日。 この傷の一つひとつは、私の「余裕のなさ」や「雑さ」が形になったものです。
何も言わずに私を乗せ、雨の日も雪の日も、 故障ひとつせず 14万キロを走り抜いてくれた健気な相棒に対して、 私はなんて冷たかったんだろう。
そう思うと、ボロボロの車体が、なんだか泣いているようにも、 あるいは「大丈夫だよ」と笑っているようにも見えてきました。
🌈 「現状維持の安心」と「変化への渇望」のダンス
ここで少し、自分の感情に耳を傾けてみました。 今、自分の中にどんな気持ちがあるのかを、しっかりと感じて、考えてみたんです。
すると、面白いジレンマ(板挟み)が見えてきました。
一つは、「現状維持の安心」。 「このボロボロさが気楽でいいんだよ。ピカピカの車なんて買ったら、 ちょっとしたカスり傷がついただけで、ショックで寝込んじゃうよ?」 という、自分を傷つかせたくない守備隊の声。
もう一つは、「変化への渇望」。 「新しい、ピカピカの車に乗って、新しい自分に生まれ変わりたい!」という、 未来へ飛び出そうとする攻撃隊の声。
「なんでこんな感情が出ているのかな?」と自分に聞いてみると、 「古びた自分」への愛着と、「新しい自分」への憧れが、 心の中で激しくダンスを踊っていることに気づきました。
私たちはいつだって、この矛盾する二つの気持ちを抱えて生きています。
でも、ふと思ったんです。 新しい車を選べば、確かに毎日が輝き出し、心はウキウキと弾むでしょう。
それは素晴らしい「変化」です。
一方で、今この瞬間の足元を見つめてみると、このエッセ君は私から何かを奪うどころか、ずっと「与えて」くれていました。
30万円という値段以上の、7年分、14万キロ分の「安心」と「移動の自由」を、黙ってプレゼントし続けてくれたんです。
川の流れのように、ただそこにあるものに感謝する。その大切さを、この「ボロボロの相棒」が教えてくれた気がします。
✨ 世界で一番、愛おしいボロボロ

「もう少し、一緒に走ろうか」
タイヤ交換したばかりの相棒に、そう声をかけました。 新しい車への憧れは消えないけれど、この傷だらけの姿は、 私が今日まで一生懸命生きてきた「証」にも感じられます。
なぜ、今の私にはこのボロボロな姿が、こんなにも美しく尊く見えるのでしょうか。
そこには、「完璧ではない自分」を許し、受け入れたいという想いがあるからかもしれません。
実は、カウンセリングの現場でも同じことを感じます。 人生でたくさん傷つき、ボロボロになってきた人ほど、 言葉にできないほどの奥深さや、人間としての「味」がにじみ出てくるものです。
傷があるからこそ、深みが増す。 ボロボロになればなるほど、実は人生には、新しい楽しみ方や味わい方が増えていく。
それは、ピカピカの新品には決して出せない、魂の輝きのようなものです。
それにしても…… タイヤ交換という日常の何気ない作業一つをとっても、 自分の内側に意識を向けてみると、これだけ多くの発見があるんですよね。
でも、これって特別なことではないんです。 わざわざ難しいことをしなくても、自分の感情が今思っていることをしっかりと感じて、 「それってどういうことかな?」とちょっと覗いてみるだけでいい。
そうすれば、日常のいたるところに「気づき」が転がっていることに気づきます。 そして、その「気づき」そのものが、私たちを幸せにしてくれるんです。
私も大好きな小林正観さんは、いつも大切なことを教えてくれます。 その核心を私なりの言葉にすると、こういうことだと思うんです。
「幸せは『手に入れる』ものではなく、幸せだと『気づく』こと。 そして、その『気づき』こそが幸せそのものなんですよ」
完璧でピカピカなものより、泥にまみれても走り続ける姿の方が、 今の私には美しく、そして尊く見えます。
皆さんの周りにもありませんか? 「もう限界かな」なんて言いながら、どうしても手放せない、 愛すべきボロボロたちが。
🌈記事に登場した「小林正観さんの言葉」が気になる方へ
今回のエピソードに寄り添ってくれた、大切な一冊をご紹介します。
『ありがとうの神様』小林正観 (著)どんな問題が起こっても、すべてを受け入れ、「喜ばれる存在」になること。正観さんの言葉に触れると、「今、目の前にある幸せに気づくだけでいいんだ」と、肩の力がふっと抜ける感覚を味わえます。
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心理カウンセラー 木村裕

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